2006-10-31   思考  
 ゴーゴーカレーで死にそうになる。

 たまに行くこの店は、チェーンながらなかなか個性的な味を出す。ゴーゴー(55)だけあって、松井ファンであることを前面的に押し出しているんだけど、何故かキャラクターがゴジラではなくキングコングだったり。あと、カレーの量をエコノミーとかビジネスとかで表してるんだけど、なんで野球と絡めなかったんだろう、とか。絶対野球用語の絡め方あったよね? まあ、それはいいわ。なかなか良い店だと思う。たった1箇所を除いて。

 スプーンじゃなくてフォークなんですよ。野球かよ! そこだけ野球か! や、うそ、フォークなのはいい。このお店のルーは粘度が高いので、まあ、フォークでも食える。むしろチキンカツとかトッピングを乗っけるときは、フォークのほうが食べやすい。フォーク、ストライクです。野球かよ!

 や、それはいいんだけど、あのー、皿が、ステンレス? なんか、金属なんすわ。で、あのー、フォークでね、たまに、引っかくんですよ。底を。ギイッ! って。ひゃあ! ってなる。ドキドキカレーですよ。で、悪いことに、それをきっかけに俺の変態な部分が顔を出して、「あっもう一回わざとギイッ! ってなってひゃあ! ってなりたい!」みたいな願望がですね、涌いてきましてですね。ちょっと、立て目にフォークつかったりしてね。いやらしいねえ。あーいやらしい。そのくせ、案の定ギイッ! ってなると、もう2回目だから、本気で気持ち悪くなって。カレー吐きそうになる。帰りたくなる。バックホームしたくなる。野球かよ!

 まあ、で、もうこんな思いはしたくない、と、慎重に、慎重にカレーを食べるのですが、もう、そうなってくると味なんて分からない。爆弾処理班のように、ただただ、ブツを解体していく作業になっている。底に溜まったルーをすくうときなんて、もう、なんか、日本の誇る工業技術みたいな感じで、ナノのオーダーでフォークを操る。iPodの鏡面加工なんて、俺に言わせればもっと綺麗に出来る。フォークで。もうこの域に達すると、いろんなものをフォークで作れる。超LSIから海底トンネルまで。ちょっと変わったところでマッシュポテトとかも。それは普通だ。普通だわ。失投した。野球かよ!

 何の話だっけ。ああ、ゴーゴーカレー。
 まあまあうまいし、職場から近いし、あれさえなければ俺的にスマッシュ級なんだけどな。野球かよ! テニスだよ!





2006-10-10   思考  
 家の玄関のドアにめちゃくちゃ腹が立っている。

 あのー、ドアにね、「引」っていうプレートがついてるんですわ。まあ、引けば開くよって意味です。知ってます。
 でも、そうは言っても、あのー、押しても、開くじゃないですか。ドアって、そうじゃないですか。ドア的にも、「もうー! しょうがないなー!」みたいな。「このやんちゃ坊主めー!」みたいな感じで、容認してくれるじゃないですか。
 パスネットにも、一応入れる方向が書かれているんだけど、あのー、ぶっちゃけ、逆に入れても改札機通るじゃないですか。「もうー! 今回だけだぞー?」みたいな感じで、通るじゃないですか。

 で、うちのドア。押しても、うんともすんともねえの。何だ、その「すいません引くことになっておりますので」みたいな態度は。引くことになってるのは知ってるよ。でも押しても開けよ。何、その融通の利かなさ。「そういうの困りますので」みたいな。気持ち悪いわー。絶対小学校の時いじめられてただろ。扉小学校で、いじめられてただろ。黒板消し挟まれたりして。

 ところで、今行ってる会社が移転した。前はアパート一間だったんだけど、なんか、それっぽいオフィスへ、やっと。そこの玄関が、夜間は暗証番号で開くようになっている。
 俺は長いこと他の会社へ常駐してたので、その本社へ行く機会がなかなかなかったんだけど、近々戻ってこれることになったので、あのー、初めて、夜に行ったんですよ。まあ、暗証番号を求められますわ。で、前に教えてもらった暗証番号を入れる。開かない。
 いや、でも、俺、暗証番号、はっきりと覚えてたんですわ。何故かめちゃくちゃ自信があったので、同じ番号を連打した。開かない。中の人に電話しようと思ったら、携帯の電源が切れている。まあ、でも、暗証番号に何故かめちゃくちゃ自信があったので、押し方とかEnterを押す順番が悪いのかなーとか思いながら構わず同じ番号を連打した。

 数十回目で開いた。

 なんでだか分からないけど、開いた。で、まあ、開いたので入って、中の人に暗証番号確認したら、全然違う数字だった。なんで開いたんだろう。なんでなんで? 開くなよ。そこは、がんばって開かないで欲しい。




2006-09-25   創作  
 スクウェアボックスのトキタ君とコント撮りました。

 こちら

 むちゃくちゃ長いです。見るな、ってことだと思います。
 最後のオチ以外全部アドリブ。見るな、ってことだと思います。




2006-09-17   創作  
 逆回転している。地球が。さっき気づいた。
 都心のビル群とビル群の谷間の日陰、デジタルキノコが生えそうな住宅街に引っ越してから1ヶ月経ったが、東西南北を未だに分かっていなかった。分かる必要が無かった。朝ベランダに洗濯物を干せば、ビルの隙間から陽がぱーっと照る時間があって、それで、帰宅する夜までには乾いている。生活スタイル上、これだけの情報があれば良かった。

 気づいたのは、カヨちゃんが遊びにきたときだ。
「あっ、この部屋、台所が鬼門だよ。やばいね」
「え? そんなはずないよ」
 このマンションが唯一誇れる「家相」に、間違いがあるわけがないのだ。
 下見のとき、大家がこの部屋の家相の良さを延々と喋っていた。なんでも、旦那が中国系の人で、風水が分かるから設計にすべて口を挟んだ、というのを、まあ、延々と、さも自分が設計したかのように。その後ろで、旦那は、ぬれせんべいを食っていた。
 そう、だから、台所が北東にあるわけがないのだ。
「でも、今、窓から西陽が差してるから、あっちが西でしょ? そしたら、こっちが北東」
 カヨちゃんが指差した先では、カーテンの隙間から漏れ出た光が、安い銀色のシェルフをさらに安光りさせていた。その上では、もっと安いカエルの貯金箱が、これまた安い影を作っていた。光源が低いせいでベロ部分の影が極端に大きくデフォルメされ、とても馬鹿っぽい。
「いや、でも、それは、ありえないよ。だって、このマンションは風水マンションなんだから」
「何それ」
「とにかく、ありえないんだよ」
「じゃあ、太陽が東に沈んでるんだねー」
 頭ごなしに否定する僕に、カヨちゃんは呆れたように言い放った。
「うん、じゃあ、そうだ」
 僕だって、負けてはいない。
「大変だね」
「ああ、大変だ大変だ」
 本当に、大変なことになっていたのだ。太陽が東に沈んでいる。ということは、地球、逆回転してる。

 僕が気づいてしまったこの事実を、誰に言えばいい。区役所か。何課に行けばいいんだろう。そもそも、なぜ誰も気づいてないんだろう。もっと、気象庁とか、毎日空を見上げてる奴らが先に気づいて大騒ぎしてもいいはずだろう。今日の朝はどうだった? テレビの天気情報の記憶をたどる。お天気お姉さんが、「今日は曇りで太陽が見えません」と言っていた。本当だろうか。本当に曇りだったのか。太陽が逆の方向にあっただけじゃないのか。もちろん僕は確かめなかった。おそらく誰も確かめてないんだろう。テレビが曇りといえば今日は曇りで、ラッキーアイテムが外人なら、今日はアイリッシュパブが混むのだ。

 いつから太陽は西から昇っているのだろうか。小学校の頃、理科で、太陽の軌跡を追ったことがある。確かあのときは、ちゃんと東から昇っていた。いや、本当にそうなのだろうか。東から昇るものだと頭から決め付けて、重大な過ちを見逃していなかっただろうか。
 ヒトの染色体の数は、長いあいだ数え間違えられていたらしい。46が正解なんだけど、何年も、47説が支配していたと言う。まあ素人が考えるよりも染色体を数えるのは難しいんだろうけど、でも、それでも、世界中の研究者がずっと間違え続けていたってのは、とても興味深い。46個しか見つからなくても、「んー、ここが、重なってるっぽいからー、はい、47!」とか無理やりこじつけた人も居るかもしれない。そんなものなのだ。しばしば僕たちは、フワフワしたパン・ケーキのような土地に、鉄筋の論理を打ち立てる。「あ、そこ、土地グズグズっすよ?」と誰かに指摘された瞬間に、ガラガラーっと、イく。

 とにかく、僕は、この事実に気づいた最初の人間らしい。武者震いが止まらなかった。俺、教科書、載るかな。載る! 間違いなく、これは載る。
「カヨちゃん。俺、区役所行って来る」
「何言ってんの? 今日土曜日だしやってないよ」
「でも行って来る」
「あそう。好きにするといいよ」
 駄目だ。カヨちゃんは駄目だ。染色体の数を無理やり47にするタイプの人間だ。僕はそうならない。家のドアを開け、僕は、僕のドアを開けた。

 大家が居た。「あっ、やすのり君。今月家賃振り込んでないでしょ」
 そうだった。えっじゃあ今払いますと言うと、「良い良い、手渡しは逆にめんどくさいから、来週までに振り込んでちょうだい」
それよりも、大変なんですよ、大家さん、と言おうとしたとき。
「いやー、やすのり君、あのことで怒って家賃振り込まなかったんじゃないかと思って、心配して来たのよ」
「えっ」
「その、あのー、ほら、下見のときに、わたし、家相が良いとか言ったじゃない。でも、ほら、台所が鬼門にあるじゃない。これはほんと仕方なく、仕方なくこうなっちゃったの。ガスの線とか、そういう関係で。でも安心して、台所のとこにお札貼ってあったでしょ、あれ、毎年お参り行ってるの。おばちゃんが。おばちゃんが毎年お参りに行って、貼りかえてるの。だから大丈夫。それからね、台所の位置以外は、本当に、本当に良い家相なの。これは、パパが言ってるから間違いないのよ」

 パパは、大家の2メートル程後ろで、ぬれせんべいを食っていた。




2006-08-30   思考  
 たまに見るのが、ネズミの耳がついた帽子をディズニーランド敷地外でかぶってる子。最近では、アメ横で見た。豚足とか売ってる店の前に居た。まだ夢の中なんだろうか。わーい、ピグレットの足が売ってるよ! かわいい! みたいなことを言ってるのだろうか。

 まあ、ディズニーランドの中で日常を忘れてキャッキャキャッキャするのはいいよ。俺もキャッキャキャッキャする。同じの3回とか乗る。でも、ディズニーランドの退場ゲートのポールをガコンとやった瞬間に大抵の人間はこっちの世界の記憶を取り戻して、あー電話料金払ってないだことの、あー仕事めんどくせえなだことの、地球やばいよねーだことの。
 でもたまに、なんかの加減でディズニーランドの記憶そのままに外へ出てしまう子が居る。で、正気に戻るまで、耳をつけながら移動する。あのー、多分、けっこう遠くまで移動する。家に着いちゃうかもしれない。そのまま次の日会社へ行っちゃうかもしれない。「はい?」とか聞きなおすときに、頭上の耳に手をやるかもしれない。チュロス食いながら。恐ろしい! 最近夢見がちな少女が多いのは、こういうことが遠因としてある気がしてならない。

 これは、何らかの対策をしなければまずいことになると思うんですよ。でかいネズミがちやほやされる一種の異世界で遊んだ人間が、こう、日常に戻るためのクールダウン的な何かを、ディズニーランドは提供するべきだと思うんですわ。例えば、まあー、ミッキーが曙にボッコボコにされてる映像を退場ゲートで流すとか、そういうの。曙に負けるんだー、みたいな。

 すべてのテーマパークは、クールダウン用の施設を作ることが義務付けられる必要があると思う。もっと言えば、テーマパークは、客のテンション管理を綿密に行う義務がある。

 その点、宮城蔵王キツネ村は評価できる。
 まだ仙台に住んでる頃だから、5年くらい前に行ったんだけど、あのー、まあ、何種類かのキツネが居て、意外に楽しい。けっこう歩いて、わー、キツネいっぱい居るなあー、とテンションが上がったところに、「寄生虫・エキノコックスについて注意喚起」という看板がドーンと登場する。えっ、キツネ、触るとやべえじゃん、っていう。ここでまあ、やや上がったテンションが、ガクーンと下がる。一応、キツネ村のキツネは大丈夫、という締めくくりなんだけど、それでも、下がる。いや、違う。故意に、下げているのだ。
 でまあ、そのあと、ヤギとか居て、まあ気分は持ち直すんだけど、最後の最後で、なんかの加減で1本足が無くなってしまったキツネが首に縄つけられてしょんぼりしてる。その足が無くなった経緯みたいな説明書きは何も無く、ただただ、出口そばの柱にくくりつけられている。え、なんでなんで? なんでここに居るの? と、当時はすっごい不思議だったんだけど、最近やっと分かった。そういうことか。すべては、客をクールダウンさせるため。

 天才が作りしテーマパーク、宮城蔵王キツネ村。ほんと、ディズニーとかは見習うところは多いと思う。

こんなのも書いたよ。



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