礼服を買いに行ったんです。
まず礼服が分からない。普段スーツを着ないので、スーツもよく分からないのに、礼服はその上級編である。突然そんな場所へ放り出されたら、俺は、並んでいる礼服の袖を手でダーってやりながら歩くことしかできない。
そんなとき、おばさんの店員が、「お探しですか?」と、スッと入ってきた。
ひととおり礼服の説明をしてくれたあと、「具体的にはこんな感じのですね」と言って、5万円の礼服と8万円の礼服を持ってきた。
「高いのもあるんですけど、あまり変わらないですから5万のほうをおすすめします」
そのあと、こう切り出した。
「礼服って、買えば10年とか持つんで。これは夏物なんですけど、スリーシーズンのものはお持ちですか?」
持ってない、と言うと、「セットだとお得ですよ」と言って、また5万円代の礼服を持ってきて、「セットで9万円にできます」と言う。
で、この時に気づいてしまった。
話題にはかすりもしないのですが、3万円代の礼服が、あるんですよ。
「この、3万円のやつは、どうなんですか?」
と聞くと、
「色が、ほら、黒が弱いんですよね」
まあ、確かに、5万円のと並べると、ちょっと黒さが弱い。
「行事のときに皆で並ぶじゃないですか。そのとき、黒さが違うと目立ちますし」
より黒いと偉いのか! じゃあブラックホールが一番偉いな!
「あと糸が全然違います」
色が違うから分かるわ!
と言って、3万の礼服を、自分のうしろのすんごい遠くにかけ直した。一番手の届きそうなやつが一番遠くに!!!
なんかもう、あれなんですよ。3万円で済むところを、9万円出させようとしてるだけなんですよ。
いや、いいんです。いいんですよ。商売って、そういうものだと思うんで。
でもね、こういう、小手先の営業トークでもりもり盛っていくやり方ってさ、もう通用しないんじゃないか。俺だけじゃなくて、誰にも。
商売をしてない人でも、客単価を上げることが基本だってことはもうみんな知ってる。あれもこれもって持ってくると、みんな気づいちゃうんじゃないの? どちらにしろ、僕らのためを思ってやっているわけではないことは明らかで、それに気づいたときに感じるのは、限りなく不快だし、絶対だまされないぞバリアを張る。
ついてきた嫁は明らかにおばちゃんに対して敵意を示していた。1900円のYシャツがあると言うのでついていったら4900円という張り紙が出ていたので「えっ1900円じゃないんですけど!!」とか言って怒ってた。これは、3枚で4900円、という張り紙だったので、嫁が違ってたんだけど、でも、そのくらいこの店のすべてを不審がっていたし、俺も、だまされないように、だまされないようにと、親指をくるくる回して脳を活性化させ、すべてをゼロベースで見ていた。具体的には、このYシャツ群は、実はすべてトリックアートなのではないだろうか、などを疑っていた。
あと、前あったのが、コンタクトを買いに行ったら、店員が、裏に取りに行く前に、俺に「これ最近出た洗浄液なんですよ。一滴垂らすだけで云々」と、俺に商品の小箱を手渡したんです。
で、しばらくして裏から帰ってきて、「どうです?」と。
もう、それあれじゃーん。一旦預けると親近感がわいて買いやすい、っていうのと、返しづらいっていう心理的なあれじゃーん。もうねー。お前をこれで洗浄してやりたい。いらんわ。っていうか非常に腹立たしい。なんかこういうテクで買っちゃうカモと思われたことが。あれだろ、もし俺これ買ったら、店を出たあと「バーン!」とか俺の後ろ姿を銃で撃つ真似とかしちゃうんでしょ? ムキー!! もうこの店絶対行かない!!!
もうね、そろそろ、そういうことじゃないんじゃないかな、と思いますよ。実際。
・ここ数年、いろいろな情報が氾濫していて、客はどんどん知恵をつけている。
・客は、売りつけられている、と気づくと、不快になる。
とすると、もう、モノを売りつけちゃいけないんじゃないか。
スーツの話にもどすと、じゃあどうすれば俺が9万円出してオールシーズン分買ったか、ですけど、えっとどうやっても買いません。でも、必要なときには買うんだから、あとで買うときに安くしてくれれば良くない? 背丈のデータも今回とれたんだし、手間がかからなくて安いなら当たり前だけどそこで買う。俺がそう選ぶ。それでいいじゃん。
とかたまには普通のことを考えてみました。
あと、コンタクト屋は、家から一番近くて便利なのでやっぱ行く。でも、二度と舐められないように、天狗の格好で行く。天狗は怖いはずである。
まず礼服が分からない。普段スーツを着ないので、スーツもよく分からないのに、礼服はその上級編である。突然そんな場所へ放り出されたら、俺は、並んでいる礼服の袖を手でダーってやりながら歩くことしかできない。
そんなとき、おばさんの店員が、「お探しですか?」と、スッと入ってきた。
ひととおり礼服の説明をしてくれたあと、「具体的にはこんな感じのですね」と言って、5万円の礼服と8万円の礼服を持ってきた。
「高いのもあるんですけど、あまり変わらないですから5万のほうをおすすめします」
そのあと、こう切り出した。
「礼服って、買えば10年とか持つんで。これは夏物なんですけど、スリーシーズンのものはお持ちですか?」
持ってない、と言うと、「セットだとお得ですよ」と言って、また5万円代の礼服を持ってきて、「セットで9万円にできます」と言う。
で、この時に気づいてしまった。
話題にはかすりもしないのですが、3万円代の礼服が、あるんですよ。
「この、3万円のやつは、どうなんですか?」
と聞くと、
「色が、ほら、黒が弱いんですよね」
まあ、確かに、5万円のと並べると、ちょっと黒さが弱い。
「行事のときに皆で並ぶじゃないですか。そのとき、黒さが違うと目立ちますし」
より黒いと偉いのか! じゃあブラックホールが一番偉いな!
「あと糸が全然違います」
色が違うから分かるわ!
と言って、3万の礼服を、自分のうしろのすんごい遠くにかけ直した。一番手の届きそうなやつが一番遠くに!!!
なんかもう、あれなんですよ。3万円で済むところを、9万円出させようとしてるだけなんですよ。
いや、いいんです。いいんですよ。商売って、そういうものだと思うんで。
でもね、こういう、小手先の営業トークでもりもり盛っていくやり方ってさ、もう通用しないんじゃないか。俺だけじゃなくて、誰にも。
商売をしてない人でも、客単価を上げることが基本だってことはもうみんな知ってる。あれもこれもって持ってくると、みんな気づいちゃうんじゃないの? どちらにしろ、僕らのためを思ってやっているわけではないことは明らかで、それに気づいたときに感じるのは、限りなく不快だし、絶対だまされないぞバリアを張る。
ついてきた嫁は明らかにおばちゃんに対して敵意を示していた。1900円のYシャツがあると言うのでついていったら4900円という張り紙が出ていたので「えっ1900円じゃないんですけど!!」とか言って怒ってた。これは、3枚で4900円、という張り紙だったので、嫁が違ってたんだけど、でも、そのくらいこの店のすべてを不審がっていたし、俺も、だまされないように、だまされないようにと、親指をくるくる回して脳を活性化させ、すべてをゼロベースで見ていた。具体的には、このYシャツ群は、実はすべてトリックアートなのではないだろうか、などを疑っていた。
あと、前あったのが、コンタクトを買いに行ったら、店員が、裏に取りに行く前に、俺に「これ最近出た洗浄液なんですよ。一滴垂らすだけで云々」と、俺に商品の小箱を手渡したんです。
で、しばらくして裏から帰ってきて、「どうです?」と。
もう、それあれじゃーん。一旦預けると親近感がわいて買いやすい、っていうのと、返しづらいっていう心理的なあれじゃーん。もうねー。お前をこれで洗浄してやりたい。いらんわ。っていうか非常に腹立たしい。なんかこういうテクで買っちゃうカモと思われたことが。あれだろ、もし俺これ買ったら、店を出たあと「バーン!」とか俺の後ろ姿を銃で撃つ真似とかしちゃうんでしょ? ムキー!! もうこの店絶対行かない!!!
もうね、そろそろ、そういうことじゃないんじゃないかな、と思いますよ。実際。
・ここ数年、いろいろな情報が氾濫していて、客はどんどん知恵をつけている。
・客は、売りつけられている、と気づくと、不快になる。
とすると、もう、モノを売りつけちゃいけないんじゃないか。
スーツの話にもどすと、じゃあどうすれば俺が9万円出してオールシーズン分買ったか、ですけど、えっとどうやっても買いません。でも、必要なときには買うんだから、あとで買うときに安くしてくれれば良くない? 背丈のデータも今回とれたんだし、手間がかからなくて安いなら当たり前だけどそこで買う。俺がそう選ぶ。それでいいじゃん。
とかたまには普通のことを考えてみました。
あと、コンタクト屋は、家から一番近くて便利なのでやっぱ行く。でも、二度と舐められないように、天狗の格好で行く。天狗は怖いはずである。
こんなのも書いたよ。