相鉄線のこと書いたら、前の会社の寮のこと思い出した。
自分でその土地を選んだわけじゃない。
前の会社の寮がそこにあって、新人はそこ、と決まってたから。
あの寮はひどかった。5階建てなのにエレベーターが無かった。
あと、寮長さんがカラスをいじめてからというもの、カラスが寮生全員を敵視していて。
1回、友達が階段の踊り場で威嚇されまくって階段を下れずに会社遅刻した。はじめてのおつかいかよ。
いや、分からんでも無い。カラスまじで怖いですよ。近くであのくちばし見て。あれを敵に回したら本当にまずい。ドラクエの敵に居る理由もうなずける。昔はゲームしながら「カラスかよ! 勇者じゃなくても倒せるだろ!」って思ってたけど、あれはやばい。勇気が試されるモンスターである。
何の話だっけ。ああ。寮。
あの寮はひどかったな。4.5畳、バストイレ共同。押し入れを開けたら、「昭和39年 忍耐」という落書きがあった。はじめて水虫をうつされたのもあの寮だ。風呂の入り口に敷いてあった、ヌメヌメしたバスタオル。忘れない。あれ以来、銭湯であっても、温泉であっても、出口の敷物を必ず飛び越える癖がついた。
で、なんというか、その寮がかなり山奥にあって。
バスで駅まで行くんだけど、そのバスが、朝、駅まで40分かかるのね。
そのあと電車に揺られ、乗り継ぎ、通勤時間2時間ですわ。
なんでこんなとこに寮買ったんだっつー話ですけど。
で、当時、仕事がめちゃくちゃ忙しかったんで、あの、早く家に着いて寝たかったし、遅くまで寝てたかったんですね。だから、なんとか通勤時間を削れないか、と考えたところ、バスですよ。バスがさあ、朝、ちんたら走ってるんですわ。低血圧か。
あと遅いくせにやたらと停留所が多い。
俺らは始発で乗るんですけど、次の停留所が、20メートル先なんですよ。ホントに。ホントに! 20メートル先なんですよ。何なの。それ。その20メートルに130円の価値があるの? せまいから? 道路せまいから?
俺大富豪になったらそこ1000往復する。それが夢(ドリーム)。
で、何だっけ。そう。バスが遅いので、自転車にしよう、と。
空色の自転車を買いました。
これが大正解で。速い速い。ずっと坂道なのも手伝って、40分が5分に短縮された。
通勤時間が1時間ちょっとになった。これなら、まあ、許容範囲内である。なかなか、いいじゃないか。
やあ、傍目から見れば、寮も腐っていれば街も腐ってる。娯楽も何もない、シケた土地ですわ。商店街はあるんだけど、肉屋のステンレス皿は空っぽなこともしばしば。たまに、ベーコンが2、3枚、紙くずのように置かれている。布団屋は何故か2個ある。
まあ、ホント、いつ退寮してやろう、と思ってたんですけど、自転車の出現で、一気に形勢逆転したわけです。
通勤時間は1時間。寮なので家賃が安い(確か月8000円だった)。ある程度お金貯まるまでこの寮に居てもいいかな、とまで思い始めたり。
でも、やっぱり、ダメでした。
ある朝、こう、いつものように自転車で颯爽と坂を下りていたところ、後ろから原付が来たんです。2人乗りしてたんで、「あー、ヤンキーか」と思ったんですけど、あの、フルフェイスしてるんですよ。二人とも。
交通法規を守りたいのか破りたいのかどっちなんだ! と心の中でツッコミを入れて、よし、と、今日も快調でござるぞ! と、ペダルに足をかけたとき、その原付が、歩道を歩いていたお婆さんに近づいて、鞄をギュイと掴んでブウンと走り去りました。
お婆さんは、「捕まえて! 泥棒!」と叫びながら走って、転んだ。
で、車道はバスが40分もかかるくらいの大渋滞なので、みんな窓外の異変に気づくんですね。「え? ひったくりですか?」みたいな感じで次々と窓を開けるんですけど、その頃には原付は渋滞の隙間をくぐって遙か先へ。
渋滞の盲点を突いた、この白昼堂々の犯行。人は大勢いるのに、誰も捕まえられない。
誰か追いかけられる人は……え? 俺? マジで? 何でそんな目で人を見るの。マジで言ってんの? えー、じゃあ、行ってきます!
みんなの期待を一心に背負って、ブルースカイ号は風になりました。
ひったくり犯はナイフとか持ってるかもしれんしもみ合いになるのは嫌だったので、せめてナンバーを覚えようと思いました。
でも、原付は信号無視して次の角を曲がり、見えなくなってしまいました。
お婆さんと警察行って、大したことしゃべれなくて、なんか、めちゃくちゃ悔しくて、あと、何この犯罪都市、と思って、1ヶ月後、その腐り切った街を出ました。
あと、ブルースカイ号は最近上京してきたトム&ハンクスの岩田君にあげました。
自分でその土地を選んだわけじゃない。
前の会社の寮がそこにあって、新人はそこ、と決まってたから。
あの寮はひどかった。5階建てなのにエレベーターが無かった。
あと、寮長さんがカラスをいじめてからというもの、カラスが寮生全員を敵視していて。
1回、友達が階段の踊り場で威嚇されまくって階段を下れずに会社遅刻した。はじめてのおつかいかよ。
いや、分からんでも無い。カラスまじで怖いですよ。近くであのくちばし見て。あれを敵に回したら本当にまずい。ドラクエの敵に居る理由もうなずける。昔はゲームしながら「カラスかよ! 勇者じゃなくても倒せるだろ!」って思ってたけど、あれはやばい。勇気が試されるモンスターである。
何の話だっけ。ああ。寮。
あの寮はひどかったな。4.5畳、バストイレ共同。押し入れを開けたら、「昭和39年 忍耐」という落書きがあった。はじめて水虫をうつされたのもあの寮だ。風呂の入り口に敷いてあった、ヌメヌメしたバスタオル。忘れない。あれ以来、銭湯であっても、温泉であっても、出口の敷物を必ず飛び越える癖がついた。
で、なんというか、その寮がかなり山奥にあって。
バスで駅まで行くんだけど、そのバスが、朝、駅まで40分かかるのね。
そのあと電車に揺られ、乗り継ぎ、通勤時間2時間ですわ。
なんでこんなとこに寮買ったんだっつー話ですけど。
で、当時、仕事がめちゃくちゃ忙しかったんで、あの、早く家に着いて寝たかったし、遅くまで寝てたかったんですね。だから、なんとか通勤時間を削れないか、と考えたところ、バスですよ。バスがさあ、朝、ちんたら走ってるんですわ。低血圧か。
あと遅いくせにやたらと停留所が多い。
俺らは始発で乗るんですけど、次の停留所が、20メートル先なんですよ。ホントに。ホントに! 20メートル先なんですよ。何なの。それ。その20メートルに130円の価値があるの? せまいから? 道路せまいから?
俺大富豪になったらそこ1000往復する。それが夢(ドリーム)。
で、何だっけ。そう。バスが遅いので、自転車にしよう、と。
空色の自転車を買いました。
これが大正解で。速い速い。ずっと坂道なのも手伝って、40分が5分に短縮された。
通勤時間が1時間ちょっとになった。これなら、まあ、許容範囲内である。なかなか、いいじゃないか。
やあ、傍目から見れば、寮も腐っていれば街も腐ってる。娯楽も何もない、シケた土地ですわ。商店街はあるんだけど、肉屋のステンレス皿は空っぽなこともしばしば。たまに、ベーコンが2、3枚、紙くずのように置かれている。布団屋は何故か2個ある。
まあ、ホント、いつ退寮してやろう、と思ってたんですけど、自転車の出現で、一気に形勢逆転したわけです。
通勤時間は1時間。寮なので家賃が安い(確か月8000円だった)。ある程度お金貯まるまでこの寮に居てもいいかな、とまで思い始めたり。
でも、やっぱり、ダメでした。
ある朝、こう、いつものように自転車で颯爽と坂を下りていたところ、後ろから原付が来たんです。2人乗りしてたんで、「あー、ヤンキーか」と思ったんですけど、あの、フルフェイスしてるんですよ。二人とも。
交通法規を守りたいのか破りたいのかどっちなんだ! と心の中でツッコミを入れて、よし、と、今日も快調でござるぞ! と、ペダルに足をかけたとき、その原付が、歩道を歩いていたお婆さんに近づいて、鞄をギュイと掴んでブウンと走り去りました。
お婆さんは、「捕まえて! 泥棒!」と叫びながら走って、転んだ。
で、車道はバスが40分もかかるくらいの大渋滞なので、みんな窓外の異変に気づくんですね。「え? ひったくりですか?」みたいな感じで次々と窓を開けるんですけど、その頃には原付は渋滞の隙間をくぐって遙か先へ。
渋滞の盲点を突いた、この白昼堂々の犯行。人は大勢いるのに、誰も捕まえられない。
誰か追いかけられる人は……え? 俺? マジで? 何でそんな目で人を見るの。マジで言ってんの? えー、じゃあ、行ってきます!
みんなの期待を一心に背負って、ブルースカイ号は風になりました。
ひったくり犯はナイフとか持ってるかもしれんしもみ合いになるのは嫌だったので、せめてナンバーを覚えようと思いました。
でも、原付は信号無視して次の角を曲がり、見えなくなってしまいました。
お婆さんと警察行って、大したことしゃべれなくて、なんか、めちゃくちゃ悔しくて、あと、何この犯罪都市、と思って、1ヶ月後、その腐り切った街を出ました。
あと、ブルースカイ号は最近上京してきたトム&ハンクスの岩田君にあげました。
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