西洋科学が発達してからこっちは、いろいろな現象から、真理の上澄みを取り出すことが重要視されてきました。
例えば、フルーツを食べていない軍隊の下級兵士ばかりが病気にかかることから、フルーツの中に含まれるビタミンCを見つけ出すような。
「フルーツ食えフルーツ」と言えば収まるところを、「ビタミンC」というモノを見つけずにはいられないこの衝動。
こういう考えは、もう既に僕らの行動基準に無意識のうちに食い込んできていて、何かあると、最小の原理原則を抽出したくなるわけです。
息子の前で歌を歌うとニコニコするようになりました。
生まれてすぐはまったく無反応であったものがニコニコするようになるというのはものすごくうれしいことなので、何回も何回もやってしまうのですが、そのうち、これは何に対してニコニコしているのか、ニコニコのスイッチは何なのか、という、最小単位を知りたくなるわけです。
そこで、「歌だけ」「リズムにあわせて身体をゆらすだけ」「微笑むだけ」みたいな、パーツに分けて当たってみたところ、リズムに合わせて身体をゆらすだけで、ニコニコすることが分かりました。
え、じゃあ、もしかして身体じゃなくてもいいのか、ということで、手を振り子のようにぶらぶらさせたところ、ニコニコする。
え、じゃあ、手じゃなくていいのか、ということで、棒切れをベッドの下からにょきっと出してぷんぷん振ってみたところ、なんとニコニコする。
これか。
これで笑うのなら、この笑いは自動化できる。メトロノームとか。多分メトロノームだけでこの子はニコニコ笑う。
分かった途端に、なんか悲しくなりました。それで、いいんだ……
多分フルーツもこんな気持ちなんだろう。
ビタミンの錠剤をガバガバ食べてる人類をこんな気持ちで見てるんだ。「あ、そう、それでいいんだ、へーえ!」みたいな。
「いっとくけど、あたしら、ビタミンだけじゃないかんね! その、なんか、食感とか! めっちゃいいかんね! あとなんか、季節感とかあるし。なんだいなんだい、ボリボリ食いやがって! リスか!」みたいな感じで、プリップリしながら見てる。木の上から、プリップリして見てる。そんなプリプリフルーツが、今、すごく愛しい。分かる、分かるよ。すごーく分かるよ!!!
ただまあ実際のところ、錠剤飲むよりフルーツ食べたほうがいろいろ総じて良いことは医者も認めているとことだと思う。
結局、フルーツを食べるとか、歌を歌うとかは、いろいろなものが作用している複雑系なわけで、その最小単位の効果が分かったからといって、それがすべてという証明にはならない。
だから、歌を歌うことはいいこと。
俺は息子の前で今日も歌を歌う。それでは聞いてください。ぞうさん。
ぞうさん ぞうさん
お鼻が 長いのね
長いですか? 自分的にはそうでも無いと思っていますが。あっこれは謙遜とかじゃなくて、ムグッ、そう取られたら逆に僕が自意識過剰みたいな感じになるじゃないですか、そういう意味じゃなくて、例えば蚊の口器は身体と同じ長さなわけで、それから考えると我々の鼻はそこまで長いと呼べるものじゃないですよね。蚊はお口が長いのね、みたいな歌あります? ブホッ、無いんですか? 何で無いんですか? え、象の歌つくっといて、なんで無いんですか? それからもう一つ例を挙げますと、身体と鼻の長さの比で言ったらアリクイ。アリクイの鼻柱とアリクイの体の比は、象のそれより大きい、こちらのほうが鼻が長いということになりますよね? アリクイの歌ありますか? ボッホ〜! 無いんですか!? あともうちょっと言いますと、鼻が長そうだという視覚的情報や、象は鼻が長いという伝聞からの脳停止発言は自分を貶めるだけかと思いますが。なんかそういう事実を客観視できていない発言を見ると萎えるんですよね。これはあなた全体の否定ではなく、その着想について老婆心からご忠告申し上げているわけで。あ、わかりづらいですか? 僕の話長いですか? 母さんはもっと長いですよ?
そうよ 母さんも 長いのよ
例えば、フルーツを食べていない軍隊の下級兵士ばかりが病気にかかることから、フルーツの中に含まれるビタミンCを見つけ出すような。
「フルーツ食えフルーツ」と言えば収まるところを、「ビタミンC」というモノを見つけずにはいられないこの衝動。
こういう考えは、もう既に僕らの行動基準に無意識のうちに食い込んできていて、何かあると、最小の原理原則を抽出したくなるわけです。
息子の前で歌を歌うとニコニコするようになりました。
生まれてすぐはまったく無反応であったものがニコニコするようになるというのはものすごくうれしいことなので、何回も何回もやってしまうのですが、そのうち、これは何に対してニコニコしているのか、ニコニコのスイッチは何なのか、という、最小単位を知りたくなるわけです。
そこで、「歌だけ」「リズムにあわせて身体をゆらすだけ」「微笑むだけ」みたいな、パーツに分けて当たってみたところ、リズムに合わせて身体をゆらすだけで、ニコニコすることが分かりました。
え、じゃあ、もしかして身体じゃなくてもいいのか、ということで、手を振り子のようにぶらぶらさせたところ、ニコニコする。
え、じゃあ、手じゃなくていいのか、ということで、棒切れをベッドの下からにょきっと出してぷんぷん振ってみたところ、なんとニコニコする。
これか。
これで笑うのなら、この笑いは自動化できる。メトロノームとか。多分メトロノームだけでこの子はニコニコ笑う。
分かった途端に、なんか悲しくなりました。それで、いいんだ……
多分フルーツもこんな気持ちなんだろう。
ビタミンの錠剤をガバガバ食べてる人類をこんな気持ちで見てるんだ。「あ、そう、それでいいんだ、へーえ!」みたいな。
「いっとくけど、あたしら、ビタミンだけじゃないかんね! その、なんか、食感とか! めっちゃいいかんね! あとなんか、季節感とかあるし。なんだいなんだい、ボリボリ食いやがって! リスか!」みたいな感じで、プリップリしながら見てる。木の上から、プリップリして見てる。そんなプリプリフルーツが、今、すごく愛しい。分かる、分かるよ。すごーく分かるよ!!!
ただまあ実際のところ、錠剤飲むよりフルーツ食べたほうがいろいろ総じて良いことは医者も認めているとことだと思う。
結局、フルーツを食べるとか、歌を歌うとかは、いろいろなものが作用している複雑系なわけで、その最小単位の効果が分かったからといって、それがすべてという証明にはならない。
だから、歌を歌うことはいいこと。
俺は息子の前で今日も歌を歌う。それでは聞いてください。ぞうさん。
ぞうさん ぞうさん
お鼻が 長いのね
長いですか? 自分的にはそうでも無いと思っていますが。あっこれは謙遜とかじゃなくて、ムグッ、そう取られたら逆に僕が自意識過剰みたいな感じになるじゃないですか、そういう意味じゃなくて、例えば蚊の口器は身体と同じ長さなわけで、それから考えると我々の鼻はそこまで長いと呼べるものじゃないですよね。蚊はお口が長いのね、みたいな歌あります? ブホッ、無いんですか? 何で無いんですか? え、象の歌つくっといて、なんで無いんですか? それからもう一つ例を挙げますと、身体と鼻の長さの比で言ったらアリクイ。アリクイの鼻柱とアリクイの体の比は、象のそれより大きい、こちらのほうが鼻が長いということになりますよね? アリクイの歌ありますか? ボッホ〜! 無いんですか!? あともうちょっと言いますと、鼻が長そうだという視覚的情報や、象は鼻が長いという伝聞からの脳停止発言は自分を貶めるだけかと思いますが。なんかそういう事実を客観視できていない発言を見ると萎えるんですよね。これはあなた全体の否定ではなく、その着想について老婆心からご忠告申し上げているわけで。あ、わかりづらいですか? 僕の話長いですか? 母さんはもっと長いですよ?
そうよ 母さんも 長いのよ