弁当買ったんすよ。
コンビニで一番安いのり弁。
美味いわけないじゃないですか。あんなもんね。油っぽいちくわに、油っぽいきんぴら。油っぽい白身魚フライ。変なコロッケ。で、もそもそと食べてたんですけど、あの、コロッケをかじったら、カレーコロッケだったんですよ。何その演出。安かろう悪かろうの弁当が、何びっくりさせようとしてんの。あんたみたいなんがそんなことしたって好きになってあげないんだから! でも、ちょっと、嬉しかったかも……いや、でも相手はのり弁よ! 考え直すのよ幸子!
こんなもんだろ、みたいな評価を与えていたものにちょっとびっくりさせられると嬉しくもあり腹立たしくもあり、みたいなあの感情。
就職活動してた時期に、俺、大学は仙台だったんだけど都内の小さい会社を中心に受けてたんで、よく東京に出てきてたんです。
で、ある日、会社近くのめっちゃ安い旅館に泊まったんですよ。学生だったから、都内で一番安い、みたいなので検索してね。
そこが、ほんっとにボロッボロで。立て付け悪くてドア開かないし、「ごめんくださーい」って言ってもぜんっぜんババア出てこないし。シャワーちょろっちょろだし。ふとんぺらっぺらだし。最低な旅館だな! と思いながらも、まあそういうのはあんまり気にしないのでぐうぐう寝て、次の日の朝スーツに着替えて出て行こうとしたとき、ババアが。
「頑張ってね」
「はあ、え?」
「就職活動でしょ? ここはそういう人が良く泊まっていくの」
「ああ、そうなんですか」
「ここに泊まった人はみんな合格するんだから」
「え、そうなの」
「いってらっしゃい」
「い、いってきます」
なんのドラマだよ、と思って腹立たしくもあり、でも、ちょっと、嬉しかったんだ。
東京のボロ旅館で、俺は初めて、温かい声を、かけられた。
面接は落ちた。
あと最近この旅館の近くを通ることがあったんだけど旅館無くなってた。
コンビニで一番安いのり弁。
美味いわけないじゃないですか。あんなもんね。油っぽいちくわに、油っぽいきんぴら。油っぽい白身魚フライ。変なコロッケ。で、もそもそと食べてたんですけど、あの、コロッケをかじったら、カレーコロッケだったんですよ。何その演出。安かろう悪かろうの弁当が、何びっくりさせようとしてんの。あんたみたいなんがそんなことしたって好きになってあげないんだから! でも、ちょっと、嬉しかったかも……いや、でも相手はのり弁よ! 考え直すのよ幸子!
こんなもんだろ、みたいな評価を与えていたものにちょっとびっくりさせられると嬉しくもあり腹立たしくもあり、みたいなあの感情。
就職活動してた時期に、俺、大学は仙台だったんだけど都内の小さい会社を中心に受けてたんで、よく東京に出てきてたんです。
で、ある日、会社近くのめっちゃ安い旅館に泊まったんですよ。学生だったから、都内で一番安い、みたいなので検索してね。
そこが、ほんっとにボロッボロで。立て付け悪くてドア開かないし、「ごめんくださーい」って言ってもぜんっぜんババア出てこないし。シャワーちょろっちょろだし。ふとんぺらっぺらだし。最低な旅館だな! と思いながらも、まあそういうのはあんまり気にしないのでぐうぐう寝て、次の日の朝スーツに着替えて出て行こうとしたとき、ババアが。
「頑張ってね」
「はあ、え?」
「就職活動でしょ? ここはそういう人が良く泊まっていくの」
「ああ、そうなんですか」
「ここに泊まった人はみんな合格するんだから」
「え、そうなの」
「いってらっしゃい」
「い、いってきます」
なんのドラマだよ、と思って腹立たしくもあり、でも、ちょっと、嬉しかったんだ。
東京のボロ旅館で、俺は初めて、温かい声を、かけられた。
面接は落ちた。
あと最近この旅館の近くを通ることがあったんだけど旅館無くなってた。
こんなのも書いたよ。