半年くらい前に、会社の食堂に嫌気が差した。
あのー、まずいんですよ。本当にまずい。なんだろ、鯖味噌とか、鯖と味噌じゃないですか、不味く作るほうがスキルが要るんじゃねーか、とか思うんだけど、それを平気でやってのける天才たち、いわゆるアーティストが弊社にはおりましてですね、僕たちはその技術力に舌を巻くばかりなんですよ。
まあ、そういうわけで、多少高くなっても昼食くらいは外で美味しいものを食べようじゃないか、という機運が、こう、同期の間で巻き起こりまして、僕たちは裸足で外に飛び出したわけです。僕たちは自由だ! キャッホウ!
幸いなことに、ウチの会社のまわりというのは再開発地帯で、うちの本社が出来たのと同時にいくつか店舗が出来て、こう、本社を囲むように一通りの店が揃っている。名の通った和食チェーン、イタリアン、ファーストフードなど。
まあ、でも、逆に言えば、それだけ、なんですよ。会社の周りにぽっとできた店なんて、数ヶ月もすれば行き飽きてしまって、僕らは、さらに外、つまり敷地外へ足を伸ばそうとする。
するんだけど。あのー、再開発ってことはもともと廃れていた土地ってことで、敷地外は、しなびた商店街しかないんですわ。布団屋のとなりに布団屋、みたいな。お前ら、機能かぶってんじゃん、みたいな。布団を買い合っているんじゃないのか、みたいな。まあ、布団はどうでもいいんだけど、あの、まあ、その商店街のなかにさびれたラーメン屋が一軒あって、そこへ行くことになる。ていうか、俺たちだけでなく、すべてに飽きた人は、そこにたどり着く。約束の地、みたいな。
で、そこ、うまくもなんともないんですよ。まずくもないんですけど、うまくもなんともない。普通。普通さん。普通さんのおやじさんが、普通のラーメンさんを作っている。
でねー、ほら、俺たちと同じ思考で、社員食堂に嫌気が差し、会社の周りの店にも飽きた人たちは定期的にそのラーメン屋の門戸を叩くことになるから、あの、味に不釣合いなほど、客が居るんですよ。
で、最近、遂に、そのうまくもなんともないラーメン屋に行列ができるようになった。で、なんか、店が、椅子みたいの置き始めて。これに座ってお待ちください、みたいな。で、しかも店のオヤジ、GAPを着はじめて。GAPさんになっていて。まあ、GAPは別にいいんだけど、その、椅子? 椅子が俺はものすっごい許せなくて。だって、そんな、絶対外に椅子が置かれるような店じゃないから。なんだろ、それから、そのラーメン屋行ってない。
こう、店が勘違いする瞬間ってのがある。そういうのを見ると、ちょっと悲しくなる。
大学時代、あのー、英語の授業で、あの、講師が毎年1本外国映画を選んで、それをみんなで見るっていう講義があったんですよ。映画の感想を書けば単位もらえる、という美味しい講義だったので、かなり人気の講義だったんですけど。
でも、あの、ぶっちゃけ、その映画、英語だし意味わかんないんですよ。恐ろしいほど分からない。まあ、人が死ぬ話だなー、くらいしか分からない。
で、どうするかっていうと、ビデオ屋で探すわけですよね。字幕スーパー版を。でも、すごい古い白黒映画だったから全然見つからないんですよ。で、どうすべー、とか思っていたんですけど、そのうち、遠くの何とかっていうビデオ屋にあるらしい、みたいなウワサが流れて。
で、原付でブイーンと、行ったわけですよ。確かにあった。あったけれど、ストックは1本しかなくて、しかも貸し出し中。
あのー、古い映画だからそんな借りる人居ないし、借りてるのは絶対同じ講義の奴なんですよ。絶対なんですよ。で、俺は単位かかってるから原付でちょくちょく覗きに行きまして、まあ、何回目かにやっと借りることができて。
見たよ。なんか、想像してた話と全然違った。あれ? みたいな。死んだと思ってた人が死んでなかったり。本当にすさまじい英語力だ。人を一人殺してしまうんだから。
まあ、それはいいんだけど、めでたく感想文書き終わりまして、返しに行ったんですよ。もう、びっくりね。その、あのー、白黒映画のストックが、3本になっていた。
多分ここ数日で鬼のように貸し出されてさー、こう、店員も、人気作品だと思っちゃったんだろうなあ。なんかでブームに火がついたに違いない、みたいな。ニヤリ、みたいな。その瞬間が嫌だ。
あのー、まずいんですよ。本当にまずい。なんだろ、鯖味噌とか、鯖と味噌じゃないですか、不味く作るほうがスキルが要るんじゃねーか、とか思うんだけど、それを平気でやってのける天才たち、いわゆるアーティストが弊社にはおりましてですね、僕たちはその技術力に舌を巻くばかりなんですよ。
まあ、そういうわけで、多少高くなっても昼食くらいは外で美味しいものを食べようじゃないか、という機運が、こう、同期の間で巻き起こりまして、僕たちは裸足で外に飛び出したわけです。僕たちは自由だ! キャッホウ!
幸いなことに、ウチの会社のまわりというのは再開発地帯で、うちの本社が出来たのと同時にいくつか店舗が出来て、こう、本社を囲むように一通りの店が揃っている。名の通った和食チェーン、イタリアン、ファーストフードなど。
まあ、でも、逆に言えば、それだけ、なんですよ。会社の周りにぽっとできた店なんて、数ヶ月もすれば行き飽きてしまって、僕らは、さらに外、つまり敷地外へ足を伸ばそうとする。
するんだけど。あのー、再開発ってことはもともと廃れていた土地ってことで、敷地外は、しなびた商店街しかないんですわ。布団屋のとなりに布団屋、みたいな。お前ら、機能かぶってんじゃん、みたいな。布団を買い合っているんじゃないのか、みたいな。まあ、布団はどうでもいいんだけど、あの、まあ、その商店街のなかにさびれたラーメン屋が一軒あって、そこへ行くことになる。ていうか、俺たちだけでなく、すべてに飽きた人は、そこにたどり着く。約束の地、みたいな。
で、そこ、うまくもなんともないんですよ。まずくもないんですけど、うまくもなんともない。普通。普通さん。普通さんのおやじさんが、普通のラーメンさんを作っている。
でねー、ほら、俺たちと同じ思考で、社員食堂に嫌気が差し、会社の周りの店にも飽きた人たちは定期的にそのラーメン屋の門戸を叩くことになるから、あの、味に不釣合いなほど、客が居るんですよ。
で、最近、遂に、そのうまくもなんともないラーメン屋に行列ができるようになった。で、なんか、店が、椅子みたいの置き始めて。これに座ってお待ちください、みたいな。で、しかも店のオヤジ、GAPを着はじめて。GAPさんになっていて。まあ、GAPは別にいいんだけど、その、椅子? 椅子が俺はものすっごい許せなくて。だって、そんな、絶対外に椅子が置かれるような店じゃないから。なんだろ、それから、そのラーメン屋行ってない。
こう、店が勘違いする瞬間ってのがある。そういうのを見ると、ちょっと悲しくなる。
大学時代、あのー、英語の授業で、あの、講師が毎年1本外国映画を選んで、それをみんなで見るっていう講義があったんですよ。映画の感想を書けば単位もらえる、という美味しい講義だったので、かなり人気の講義だったんですけど。
でも、あの、ぶっちゃけ、その映画、英語だし意味わかんないんですよ。恐ろしいほど分からない。まあ、人が死ぬ話だなー、くらいしか分からない。
で、どうするかっていうと、ビデオ屋で探すわけですよね。字幕スーパー版を。でも、すごい古い白黒映画だったから全然見つからないんですよ。で、どうすべー、とか思っていたんですけど、そのうち、遠くの何とかっていうビデオ屋にあるらしい、みたいなウワサが流れて。
で、原付でブイーンと、行ったわけですよ。確かにあった。あったけれど、ストックは1本しかなくて、しかも貸し出し中。
あのー、古い映画だからそんな借りる人居ないし、借りてるのは絶対同じ講義の奴なんですよ。絶対なんですよ。で、俺は単位かかってるから原付でちょくちょく覗きに行きまして、まあ、何回目かにやっと借りることができて。
見たよ。なんか、想像してた話と全然違った。あれ? みたいな。死んだと思ってた人が死んでなかったり。本当にすさまじい英語力だ。人を一人殺してしまうんだから。
まあ、それはいいんだけど、めでたく感想文書き終わりまして、返しに行ったんですよ。もう、びっくりね。その、あのー、白黒映画のストックが、3本になっていた。
多分ここ数日で鬼のように貸し出されてさー、こう、店員も、人気作品だと思っちゃったんだろうなあ。なんかでブームに火がついたに違いない、みたいな。ニヤリ、みたいな。その瞬間が嫌だ。
こんなのも書いたよ。