今行っている会社、というのは、実は去年の年末にもお世話になっていたところで。実は、あまり良い思い出が無い。
今はそのビルの15階のわりと快適な部屋に鎮座して、なんだ、お菓子とかむしゃむしゃ食べながら自由にお仕事させてもらっているのですが、去年の12月頃だったかなあ、同じビルの7階でせこせこと一人作業をしておりました。同じビルでも15階と7階の待遇の違いは雲泥の差。7階はサーバールームといって、まあ、高いマシンがいっぱい並んでいる暗い部屋。で、マシンの温度を下げるためになんか常に寒い。もちろん飲食禁止。しかも、その部屋は本当はそこの社員の人しか入れないため、なんだろ、出入りするのに、社員カードが必要なんですよ。つまり、出入りするときは、いちいちそこの社員さんを呼ばなければならない。それがおっくうなので、まあ、めったなことないと外に出なくなり、まあ、本当に暗い生活を送りました。まあ、囚人ですわ。言ってみればね。
そんなところに居ると、何か、変なことに熱中する気持ち、わかるでしょうか。グリーンマイルで年老いた囚人がネズミを手慣らしたように、俺も、自然と何かそういう方向へ気持ちが向いていた、といいますか。
ある日、俺、こう、トイレで用を足してたわけですけど、あの、何気なく、何気なくね、トイレットペーパーのロールを、あの、なんだ、ホテルのトイレみたく、三角折りに、したんですよ。
次の日、まあ、昨日のことなんてすっかり忘れてトイレへ行ったんですけど、あの、ペーパーが、三角折りされている。もう、びっくりしましたよ。この会社に何人の人が居るかは知らないけど、昨日から今日までのあいだ、三角折りの、なんつーの、リレーが、続いたわけじゃないですか。すごい。まあ、内容は何であれ、こう、みんなが一つになるのって美しい。それがトイレであっても。
その日から、俺がトイレへ行くと、いつもトイレットペーパーは三角折りになっていました。俺は、それをまた三角折りにし、次の人に繋ぐ。たったそれだけのことだけど、とても、楽しかった。まだ見ぬたくさんの人たちと、一つの何かを作っている。そう実感できた。
で、なんだろ、そのリレーが始まってから、半月くらい経った頃でしょうか。
俺、いつものようにトイレへ行ったんですけど、あのー、すぐ後に打ち合わせが控えていまして、かなり慌ててたんですわ。で、こう、まあ、三角折りどころではなくって。まあ、折ることは折ったんだけど、なんだろ、三角形の頂点が、かなり右側に偏ったような、すごい不恰好な折り方になってしまった。まあ、でも、時間無いですから、そのまま行ってしまったわけですよ。
で、次の日トイレへ行ったんですけど。そこには、見慣れた、右側に偏った三角折りが。
えー! あれー!! 何で!!!
この事実から、考えられることは2つ。
・この会社の人はとてもユニークで、右側に偏った三角形の形状をそのままリレーした。
・そもそも、俺しかこのトイレを利用していなかった。
嫌だ。後者は嫌すぎる。まじかよ。いや、そんなことは無い。無いと思いたい。無いと思いたかったけれど、一応、会社の人に聞いてみたんですよ。そしたら、
「ああ、7階はサーバールームのほかは空きなので、ヤスノリさんしか居ないと思いますよ」
ギャー!! 俺は、一人で、何をしていたんだ。誰かと一緒に何かを作っているつもりが、実は一人ぼっちだったという事実。そもそもこの世界は俺一人だった。あの感動は全部まぼろしだった。痛い。心臓がリアルで痛い。
俺は、ごく自然に、トイレットペーパーを3つ盗んだ。
今はそのビルの15階のわりと快適な部屋に鎮座して、なんだ、お菓子とかむしゃむしゃ食べながら自由にお仕事させてもらっているのですが、去年の12月頃だったかなあ、同じビルの7階でせこせこと一人作業をしておりました。同じビルでも15階と7階の待遇の違いは雲泥の差。7階はサーバールームといって、まあ、高いマシンがいっぱい並んでいる暗い部屋。で、マシンの温度を下げるためになんか常に寒い。もちろん飲食禁止。しかも、その部屋は本当はそこの社員の人しか入れないため、なんだろ、出入りするのに、社員カードが必要なんですよ。つまり、出入りするときは、いちいちそこの社員さんを呼ばなければならない。それがおっくうなので、まあ、めったなことないと外に出なくなり、まあ、本当に暗い生活を送りました。まあ、囚人ですわ。言ってみればね。
そんなところに居ると、何か、変なことに熱中する気持ち、わかるでしょうか。グリーンマイルで年老いた囚人がネズミを手慣らしたように、俺も、自然と何かそういう方向へ気持ちが向いていた、といいますか。
ある日、俺、こう、トイレで用を足してたわけですけど、あの、何気なく、何気なくね、トイレットペーパーのロールを、あの、なんだ、ホテルのトイレみたく、三角折りに、したんですよ。
次の日、まあ、昨日のことなんてすっかり忘れてトイレへ行ったんですけど、あの、ペーパーが、三角折りされている。もう、びっくりしましたよ。この会社に何人の人が居るかは知らないけど、昨日から今日までのあいだ、三角折りの、なんつーの、リレーが、続いたわけじゃないですか。すごい。まあ、内容は何であれ、こう、みんなが一つになるのって美しい。それがトイレであっても。
その日から、俺がトイレへ行くと、いつもトイレットペーパーは三角折りになっていました。俺は、それをまた三角折りにし、次の人に繋ぐ。たったそれだけのことだけど、とても、楽しかった。まだ見ぬたくさんの人たちと、一つの何かを作っている。そう実感できた。
で、なんだろ、そのリレーが始まってから、半月くらい経った頃でしょうか。
俺、いつものようにトイレへ行ったんですけど、あのー、すぐ後に打ち合わせが控えていまして、かなり慌ててたんですわ。で、こう、まあ、三角折りどころではなくって。まあ、折ることは折ったんだけど、なんだろ、三角形の頂点が、かなり右側に偏ったような、すごい不恰好な折り方になってしまった。まあ、でも、時間無いですから、そのまま行ってしまったわけですよ。
で、次の日トイレへ行ったんですけど。そこには、見慣れた、右側に偏った三角折りが。
えー! あれー!! 何で!!!
この事実から、考えられることは2つ。
・この会社の人はとてもユニークで、右側に偏った三角形の形状をそのままリレーした。
・そもそも、俺しかこのトイレを利用していなかった。
嫌だ。後者は嫌すぎる。まじかよ。いや、そんなことは無い。無いと思いたい。無いと思いたかったけれど、一応、会社の人に聞いてみたんですよ。そしたら、
「ああ、7階はサーバールームのほかは空きなので、ヤスノリさんしか居ないと思いますよ」
ギャー!! 俺は、一人で、何をしていたんだ。誰かと一緒に何かを作っているつもりが、実は一人ぼっちだったという事実。そもそもこの世界は俺一人だった。あの感動は全部まぼろしだった。痛い。心臓がリアルで痛い。
俺は、ごく自然に、トイレットペーパーを3つ盗んだ。
こんなのも書いたよ。